純鉄は、機械部品としてほとんど用いられることがない。通常は炭素鋼か鋳鉄として使用する。その特性は含まれる炭素量によって大きく異なってくる。炭素の含有量が2%以下の合金を炭素鋼、それ以上を鋳鉄と呼ぶ。
 鋼の熱処理は、材料の強度と硬さを制御するために行われる。大きく分けて2種類の熱処理がある。ひとつは、焼入れ・焼戻し(両者を併せて調質とも呼ばれる)で、材料に強度と硬さを与える。もうひとつは焼きならしと呼び、材料内部の不均一なひずみを取り除いて材料を軟化させる。SS400など一部の材料を除くほとんどの鋼に熱処理が施される。たとえ高強度の鋼でも適正な熱処理が与えられなければ本来の特性は得られない。最も広く使われる熱処理は焼入れ・焼戻しである。図面上で調質という指示を与えれば標準的な焼入れ・焼戻しが行われる。焼入れ・焼戻しの結果は、材料の引張強度に深く関係する硬さを用いて表す(一般的に硬さと引張強度はほとんど線形関係にある)。硬さの表記は、ビッカース、ブリネル、ロックウェル、ショアの4種類のいずれかが用いられる。最初の3種類は圧子を材料表面に押し込み、その圧痕の大きさによって硬さを判断する破壊式試験方法である。4番目のショアは鋼球を一定の高さから自由落下させたときの跳ね返り具合で硬さを計る非破壊試験法である。ショア硬さは簡単に試験ができるという長所を有するが、計測の信頼性としては前者3種類の方が優れている。


図 炭素の平衡状態図と顕微鏡組織図

 鉄・炭素合金の状態図は、合金が組成(炭素の含有量)と温度によって大きく変化することを表している。下の図は、炭素含有量による内部構造と特性の違いを示している。


表 鋼の熱処理方法


表 熱処理の機能と指定方法