機械を構成する材料は同じでも、材料内部の微視的な結晶構造や応力分布の状況に応じて、機械的な特性も大きく変わってくる。これらを制御するのが熱処理である。熱処理は色々な金属に施されるが、中でも機械設計に重要なのが鋼の熱処理である。鋼の機械的特性は熱処理によって大幅に変化する。鋼が機械や構造物に幅広く用いられる理由のひとつはそこにある。熱処理は大きく分けて2種類ある。ひとつは、焼入れ・焼戻しのように、材料を硬くすることで摩耗に対する抵抗力を増し、材料強度を上げて局所的な変形を低減する硬化処理である。もうひとつは、焼きならしのように、材料を加工しやすくするために歪を除去して軟化させると同時に、材料の内部構造を均質化する処理である。


図 鋼の熱処理における温度・時間線図


表 鋼の熱処理の種類と特徴


表 各種材料の熱処理