部屋の天井から、2本の長く細いロープが垂れ下がっている。このロープの他には家具さえないという殺風景の部屋に、女の子が入ってきた。そこで、彼女に「その2本のロープを結びなさい」と指示した。そこで彼女は、片方のロープを左手で持って、もう一方のロープに近づこうとしたが、図1に示すように、それをつかもうとしても右手が届かない。さてどうしたらよいか。答は、図2に示すように、あらかじめ片方のロープに靴を結わえ、振り子のように振らせておくことである。左手でロープを持ち、右手でその振り子の靴をつかむ。(参考文献:中尾政之、畑村洋太郎、服部和隆「設計のナレッジマネジメント」日刊工業新聞社)


【思考演算の説明】
これは幼稚園の園児向けの問題だそうである。部屋の窓枠に「それを使いなさい」と言わんばかりに人形が置いてあり易しくなっている。この問題は、物理学の知識のない子供に、発明の理論を教えるための問題だそうである。大人が解けないと恥ずかしい・・・・・・。振り子はちょっと考えれば誰でも思いつく。しかし、重りがない。さて困った。できない。でもそこで思考停止するのがいけない。ここで使える道具は、女の子と空気だけである。それさえわかれば、ほとんど解決する。振り子の重りは靴でも服でも構わない。また重りにしなくとも、服や靴下を裂いて、延長ロープにすることを考えてもいいだろう。髪の毛だって切れば延長ロープになる。また、片足の指先にロープを結んで、もう片方の足で床の上に立って手を伸ばせば、身長分、伸ばせる。こうすると両手を広げる長さよりも長くなり(両手を広げたとき、左右の指先の距離は身長にほぼ等しい、という暗黙の原理がある)、遠くのロープに届く。もしかしたら窓を開ければ風が吹いてきて、ロープがなびくかもしれない。蛇足ながら、アルトシューラーは人形と一緒に風船を置いておくと、さらに課題が難しくなると言っている。なぜならば、風船は軽すぎて重りには向かないが、園児が魅力的なものに気を奪われて戯れてしまうからである。実は大人も同じである。解を求めて悩んでいるところに“ヒカリモノ”をちらつかされると、ついそれに夢中になってしまう。たとえば、ファインセラミクス、形状記憶合金、ファジィ制御、超発明術など、筆者ならずとも踊らされた人がいるだろう。