第3機能を加えて要求機能を満たすことができるが、これを図で説明する。たとえば、イオンや原子を用いたドライエッチング では、材料のガスをうまく選んで異方的に被エッチング物を削りたい。つまり深さ方向だけ、選択的に削って側面を垂直に仕上げたい。しかし、0.1μm/分とエッチング速度が小さいのが問題である。この時は、図(a)に示すように、ガスを変えて掘れた穴の中に成膜することを第3機能として用いる。そうするとエッチングガスとして、等方的にマスクの下まで削れてしまうが、エッチング速度が1μm/分と大きいガスをもちいることができる。つまり掘っては壁を固める。この時、被エッチング物にバイアス電圧を印加して、プラズマを穴の底に引き込んで、底だけエッチングする工夫を使う。普通はこの2つのガスを最適な混合率で混ぜたガスを用いるが、間欠的に両方のガスを交互に流すと、第3機能を時間的に挟むだけで、「異方的に削る」と「高いエッチング速度で削る」という2つの良い効果があわせて得られる(ボッシュプロセスと呼ばれる)。間欠的に発光するレーザで加熱するのも、第3機能を使った好例である。連続的に加熱すると、被加工物の全体の温度が高くなって困るときは、図(b)に示すように、瞬間だけ表面を加熱し、次の発光まで被加工物を冷却させる。冷却という第3機能を加熱の中に挿入したのである。交流電圧をターゲットに印加するスパッタリングも同じである。ターゲットをプラスにして、マイナスのイオンを引き込んでぶつけさせターゲットの分子をスパッタリングする。ところが、ターゲットが絶縁体の時はすぐに帯電するので、図(c)に示すように、次の瞬間にグランドに落としてマイナスの電荷を放電する。放電という第3機能を帯電の中に挿入したのである。パルス電源を用いた溶接、放電加工、メッキ、なども同じ考え方である。(参考文献:中尾政之、畑村洋太郎、服部和隆「設計のナレッジマネジメント」日刊工業新聞社)


図 第3機能を加える

【思考演算の説明】
 第3機能を加えて、かつ2つの機構間の距離を空間的・時間的にずらすと、要求機能を満たすことができる。