パイプの中にドロッとした液体を通す機構を考えてみる。パイプの端から押しても引いてもうまく流れないとする。この時は、図に示すように、パイプは流路の内壁であるという液体隔離の機能Aに、パイプがポンプであるというアクチュエータの機能Bを掛けてやる。すると(a)パイプ内壁にめねじを切っておき、パイプが回転すると摩擦で液体が引きずられるようにするか、(b)パイプ自身の材質を柔らかくして腸のようにぜん動運動させるか、(c)パイプの内面に“竹の子”状に斜面を切り、液体のダイラタンシー(ずり速度が大きくなると抵抗が大きくなる性質)を利用して、前後動の速度を変えて液体を送るとか、などが考えられる。(参考文献:中尾政之、畑村洋太郎、服部和隆「設計のナレッジマネジメント」日刊工業新聞社)


図 機能乗算の例

【思考演算の説明】
 機能を考える場合、機能を掛けたり割ったりすることを考える。機能Aと機能Bとを同時に与えるのが乗算、全体から機能Bだけを除くのが除算である。これは乗除というより、機能の加減と同じことであるが、同時に働く2つの作用について考えており、機構の加減と区別するために乗除とした。