鋼板の板厚(t)に対して、内側最小曲げ半径(R)が小さすぎる場合、つまり、その比(R/t)が小さすぎると割れが発生する(図1)。これは曲げによって部材の外側に発生する引張り応力が、材料の引張強度を超えたためである。割れが発生するか否かの限界の最小R/t比は、鋼材の圧延方向や材料の硬さにも依存する。様々な要因を考慮した上で経験的に判断すると、最小曲げ半径比R/t比は1.5以上を確保すべきである。圧延方向に平行に曲げる場合は、圧延方向に直角に曲げる場合より、最小R/t比を大きく取る必要がある。また、加工硬化材は焼き鈍し材に比べ、最初R/t比を大きくとる必要がある(表1)。このように圧延方向、硬度、材質、板厚などによって最小R/t比は異なるが、1.5以上の値を設定すれば、まず割れは発生しない。