真空吸着搬送機では被搬送物を真空チャックで固定している。しかし、停電時に真空ポンプが止まると、真空圧が減少してチャック保持力が小さくなり、ついには被搬送物を落下させる恐れが生じる。そこで、空気圧回路では、停電時には、電磁弁に付いている圧縮ばねが働いて回路を閉じ、その結果、真空チャックの真空を保つように設計する。


図 真空チャック用の空気圧回路

 本図は真空ポンプで真空チャックの真空を保っているときの状態を示している。この回路では、搬送物を真空チャックからはずす時間を短くするために、急速に圧力を真空から大気圧以上に変化できるように、右のもう一つの真空破壊用回路を設定している。停電時では、3方向弁で真空ポンプへ向かう回路から右の2方向弁の方へ切り替わるが、同時に2方向弁が閉になるので、結局、真空チャックの真空は保たれる。

【設計のアドバイス】
 設計者は停電時に何が起こるか、常に仮想演習しなくてはならない。図(a)は循環水で冷却している電気炉である。停電時にポンプが止まると、冷却水が蒸気爆発して、剛性の低いジェイント部分を噴き飛ばす。誘導炉を用いて鋳鉄を溶解している時ならなおさらで、大電流の流れる銅パイプが溶けて、そこから水が噴きだし、鋳鉄もろとも水蒸気爆発するという大事故につながる。バッテリを装備して、停電時でも冷却水ポンプを回すか、タンクに圧縮空気をいれて、冷却水を押し流すようにしておく。図(b)は静圧軸受を用いた工作機械である。圧縮空気がなくなると、スピンドルは摺動して摩擦熱が発生し、油が燃えてあたり一面白煙が立ちこめる。停電時には、スピンドルに機械的にクラッチ・ブレーキか、または電気的に回生ブレーキが働くように設計しておくべきである。図(c)は電磁チャックであるが、同様に、電気が切れたら事故が起こる。そこでバッテリーは不可欠である。人身事故ではないが、コンピュータにも無停電電源つまりバッテリーは不可欠である。シャットダウンする時間は少なくとも確保したい。図(d)はエアシリンダであるが、エレベータのようにエアが切れたらラチェットが働くような機構が欲しい。


図 停電時の事故