UOE鋼管(図1)の拡管加工のために機械式エキスパンダー(図2、図3)を導入したが、加工によってパイプ長手方向の真直度が悪くなり、真直度不良で良品が製造できなかった。原因は、図4のように、潤滑油がパイプの下面に溜まって、上下面の摩擦状態が異なったため、図5のように管長手方向に曲がりが生じてしまったためである。
 管内面洗浄装置の洗浄水の中に潤滑油を入れ、管を回転させながら洗浄することで、摩擦係数の均一化をはかって解決した。


図 1.UOE鋼管製造プロセス


図 2.機械式エキスパンダー


図 3.機械式エキスパンダーの拡管作動機構


図 4.拡管時に潤滑油が管内面に垂れる影響


図 5.拡管後の曲がり

【設計のアドバイス】
 (1)その原因追及の進め方で最も大切だと痛感したことは、物事を論理的に追求していかねばならないということだった。曲がりに影響を与える因子を論理的にリストアップし、その影響度の大きさを検証した結果、前述のように潤滑油に到達した。
 (2) パイプ内表面の摩擦係数の他に大きな影響を与えるのは管厚の偏肉とばらつきである。逆に鋼管の塑性加工で、寸法精度を向上させるには、拘束度を高めることが効果的である。たとえば、機械式エキスパンダーで鋼管を拡管する場合、曲がりと真円度を同時に向上させることに効果的な方法は、図3(a)に示すようにドローバーの外にあるホーンにサポートローラを設置し、既に一部拡管完了したパイプの内面を、そのサポートローラで拘束した状態で拡管することである。