樹脂部品用の金型を製作するために、CAMで作成したNCデータを用いて加工したところ、ボスとして残るべきはずの所が一部欠けた形状でできあがった。原因は、図3の削り残し部分を図4のように削らせたかったのだが、CAMソフトが工具経路を自動で決定するようになっており、ボス部を島残しに選択しなかったために、図5のようにこのボス部を通る工具経路が自動的に作成されてしまったからである。


図 1.作ろうとした金型部品


図 2.できあがった部品


図 3.NCデータで削りたかった部分


図 4.できるはずだったNCデータ


図 5.実際にできたNCデータ

 一般に、NC機械の工具経路決定ソフトウェアは自由度がまだ少ない。加工開始直後の動きを指定できればこのような事故は防げたが、このソフトウェアはそれができなかった。したがってこの場合は、愚直にボス部の図形も島残しとして選択しておくべきだった。時間を節約しようとして手順を省いたのがいけなかった。
 ちょっと複雑なNCデータでは何が何だかパッと見ただけではわからない。最近では、NCデータによって実際に削っているかのように過程を見せたり、削られるであろう形状を四方八方からながめられるようにしたり、時間的、立体的にシミュレーションするソフトウェアがあり、これを使えばこのようなミスは防ぐことができる(図6)。


図 6.実際のNCデータの表示