2700トンの穀物を満載した大形サイロが、深夜、前触れもなく証人もなく倒れ始め、2つに折れて崩壊した。図1にサイロの断面図を示す。主因は、地下水に侵襲されたパイルが弱くなって座屈が生じたためであるが、それを拡大した引き金は、穀物の片積みか、風の影響か不明である。
引用文献〔1〕“Failures of Reinforced Concrete Grain Silos”;O.F.Theimer, Trans.of ASME, J. of Eng. for Industry, May 1969, pp461-477
〔2〕畑村洋太郎、竹内孝次他;“サイロ内で生じる物理現象の測定法―サイロ内で生じる物理現象の解明”,粉体工学会誌、(1996.8投稿中)
サイロ崩壊の原因を大別すると、(1)基礎構造の不備、(2)設計強度の見積の誤り、(3)増強のための補強構造の不備、の3つになる。
図2に、サイロの各高さでの、壁面に垂直に働く圧力(側圧と呼ぶ)を示す。粉体は内壁面の摩擦力で支えられてアーチをつくる。しかし、粉体が流れ出すと、静的な応力状態とは全く異なる状態となる。アーチが崩壊し、上の粉体がひと塊にドサッと落ちてくると、全重量と慣性力との和が底面に働くき、横方向への圧力も急増する。その結果、底が抜け、壁は破壊し、パイルが座屈する。
サイロの側圧の測定例を図3に示す。粉体によっては、動き出すと100%以上に増した側圧(図内の黒丸の異常に大きな値)を発生させる。