S48Cの部品を溶接したところ、溶接割れが入って使い物にならなかった
図1に示すクラッチの隙間Cを調整する機構として、クラッチボスにねじを切り、調整ねじで位置決めをした。しかしトルク変動でねじがゆるむため、ねじの外周を図2のように溶接した。すると、ねじをS48Cで作ったため、溶接後、割れが入り、使い物にならなかった。結局クラッチボスをすべて廃棄して、ねじ穴がなく、溶接不要の形状のものを作り直した。
【設計のアドバイス】
高炭素鋼には溶接はできない。溶接熱によってA3変態点(約700℃)を超えた熱影響部に、マルテンサイト変態が生じて体積膨張が起こり、これによって発生する応力や熱収縮差によって生じる応力によって割れが発生する。溶接には低炭素鋼(S20Cなど)を使うこと。鋳鉄にも溶接はできない。
どうしても高炭素鋼を溶接する場合、溶接前に加熱したり、溶接後に徐冷するなどして母材のマルテンサイト化を防ぐ。鋳鉄の補修のためにどうしても溶接をしたいときは、ニッケルを使う。