合金に対する酸の作用を研究するため、密閉室の中に試料を置いて試験を行う(図1)。この密閉室は酸で満たした後に密封され、内部でさまざまな組み合わせの温度と圧力の条件が作られる。ところが酸は試料だけでなく、密閉室の壁とも反応してしまう。壁面を守るために壁面にはガラスコーティングを施してみたが、加振などの試験ではこのガラスコーティングに容易にひびが入ってしまう。この問題では、答えは明らかである。酸を試料の中に入れればよいのである(図2)。圧力や温度といった必要条件は、試料兼密閉室の外で作り出すことができる。 (参考文献:実際の設計研究会編「TRIZ入門」日刊工業新聞社)
【思考演算の説明】
最初のステップは、システムの各要素の機能をすべてリストアップすることである。酸の機能は試料と反応することである。この機能に関しては議論の余地はない。対立は、補助的な機能−−試料の周囲に液体を保つこと−−に関連して起きている。この補助的機能を果たしているのは密閉室であり、密閉室は主機能を補助するためにのみ必要となっている。この主機能と補助的機能を、ただひとつの構成要素で達成できれば理想的な設計となる。そこで密閉室なしに酸を試料と接触した状態に保つ、という条件を達成するにはどうしたらよいかという新しい問題が発生する。すなわち、初期の密閉室の保護という問題は、全く異なる問題「液体を試料の周りに保つにはどうしたらよいか?」へと変換されたのである。