図1に示すように、遠心力は回転中心から外周部へ向かって、構造を引っ張るように働く。すると中心部には圧縮応力ではなく、引張応力が働くので、破断するとしたら中心部に近い根元が最も危ない。何とかして、中心部に圧縮応力が働くようにできないだろうか。図の(a)に示すように、回転体の中に比重の異なる水銀と油を入れ、重い水銀が軽い油を押し、その油が中心部を圧縮するという構造を採用する。昔の調速器のように、重りが遠心力で外に引っ張られると、リンクによって中心部のピストンを下に押すという構造でもよい(図(b))。シリンダの中の液体が中心部に静水圧を発生させる。超高速回転スピンドル用のチャックというのもこのような構造になるのだろう。これまではコレットチャックと呼ばれ、ドリルをくさびで固定するチャックが広く使われているが、これは遠心力が働くとくさびが外に広がり、チャック力が小さくなる。そこでこの心理的惰性を打ち破るカラクリが必要になる。(参考文献:中尾政之、畑村洋太郎、服部和隆「設計のナレッジマネジメント」日刊工業新聞社)


図 1.回転中心部には引張応力が生じる


図 2.回転軸中心に圧縮応力が生じる