ウィスキーボンボン、つまり、チョコレートの中にシロップやウィスキーが入っているお菓子はどうやって作るのだろうか(図)。この時、できあがったチョコレートの球殻には、穴をあけた形跡や2つに割った跡が何ら残されていなかった。シロップやウィスキーを予め凍らせておき、その回りに溶けたチョコレートを被せる。普通に考えると、まずチョコレートの容器を作って、その中にシロップやウィスキーを注ぎ込むというプロセスを考える。しかし、ここでは内外逆転させて、シロップやウィスキーの容器(固まり)を作って、チョコレートを注ぎ込む(被せる)と考えたのである。(参考文献:中尾政之、畑村洋太郎、服部和隆「設計のナレッジマネジメント」日刊工業新聞社)


図 ウィスキーボンボン

【思考演算の説明】
 内と外とを反転させた例である(内外反転)。物体の内側に要求されている機能を、外側に担せてみるのである。海外の中華料理屋で食後に出てくるフォーチュンクッキー(焼いたクッキーの中にお神籤(みくじ)の紙が入っている)や、アイスクリームの天ぷらも、この類の解である。いたずらでやる実験だが、金魚を液体窒素の中に入れると、液体窒素が沸き立ち、金魚の回りの水が固まって、ちょうど金魚を氷の衣で揚げた“天ぷら”ができる。すぐに水の中に入れてやると、氷が溶けて金魚は再び泳ぎ出す。これらクッキー・ころも・氷は、比較的熱伝導しにくいので中のものの温度変化を小さく保つことができる。