高飛び込みの練習は危険がつきものである。図1に示すように、水面に対して垂直に進入できない時は大きな衝撃を受ける。高飛び込みでなくても、たとえ水面と同じ高さから飛び込んでも、“腹打ち”で泳げなくなるぐらい痛くなった経験を、誰しも持っていると思う。もっと柔らかい水が欲しい。さてどうしたらよいか。まず、プールを泡立たせる方法が考えられる。プールを泡立たせることは、水を空気の殻代わりに使う方法である。なお、空気は水よりずっと柔らかいが、空気を満たしたプールに飛びこむ人はいない。空っぽのプールに飛び込むのが最も危険で、どこの小学校でも、プールに水が張られているか確認してから入りましょう、とまず教えている。それならば図2に示すように、ゴムまりやスポンジの短冊で覆われたプールに飛び込むのがよい。ゴムまりのプールは屋内遊園地に設置されており、小さな子がかきわけるように“泳いでいる”。また、スポンジを短冊状に切ったものを満たしたプールは、走り高跳びや棒高跳びの練習場で使われている。落ちても痛くない。 (参考文献:中尾政之、畑村洋太郎、服部和隆「設計のナレッジマネジメント」日刊工業新聞社)


図 1.水が硬すぎる


図 2.“柔らかい水”

 プールを泡立たせる方法を実際に実行したら、飛び込んだ人が溺れるという問題が生じるだろう。何しろ液体の比重が小さくなって、浮力が生じない。下水処理場に行くと、処理池のあちらこちらに浮き輪がかけてあることがわかる。これは生化学反応を高めるために、空気をブクブクだして処理液体を泡だらけにしているため水の見かけの比重が小さくなり、人が誤って転落したとき浮上できないからである。でも泡風呂やジャクジーで子供が溺れたいう話も聞かないから、人間の水泳能力はそれより高いのかもしれない。