生産ラインでは、段取り時間の長短が生産性を大きく左右する。この段取りを考えて、たとえば、ボルトの位置を決めておかないと、後で工具が入らなかったり、長いボルトがはずせなくなる。実際の現場では、雌ねじの位置を確認しながら、ボルトを長いバカ穴に差し込んで何回転もねじ回すのが面倒だから、図のように、バカ穴をU字穴に変えたり、フランジを薄くしたり、クランプや万力で締めたりする。締結という機能を満たすだけならば、長いボルトと長いバカ穴は必ずしも必要ない。しかし、普通は、締結機能自体が金型の機能に対して本質的ではないので、初心者は適当に設計して、その結果、極めて使い勝手が悪いものを作って、失敗する。なお、ここの例ではプロの設計者は、回転させて軸力を発生するねじではなく、軸力だけが発生する油圧シリンダを使う。(参考文献:中尾政之、畑村洋太郎、服部和隆「設計のナレッジマネジメント」日刊工業新聞社)


図 段取り時間を短くするための工夫

【思考演算の説明】
 段取りまで含めて使用プロセスを仮想演習して、その時間軸を頭の中に入れて設計していないと、評価の時に高い“つけ”を支払うことになる。また、段取りを生産ラインの外で行うので、“外段取り”とも言う。