溶接する際の、予熱、パス間温度管理、後熱は、主として溶接部の低温割れの防止を目的としている。いずれも溶接部の冷却速度を遅くし、溶接部の組織硬化の防止、拡散性水素量の低減、熱拘束の緩和を図っている。予熱温度(To)は、鋼材の組織(硬化しやすさ)、溶接材料の拡散性水素量、継手の拘束度、などがわかれば、以下の式で求められる。
To=1440Pw-392(℃)
Pw=PCM+H/60+RF/40000
PCM(溶接割れ感受性組織)=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B(%)
H:JISグリンセン法による溶着金属の拡散性水素量(Z3113,ml/100g)
RF:拘束度(Kgf/mm・mm)
具体的に拘束度を考慮し予熱温度を求める方法として、図1に示す開先形状から命名した、斜めY形割れ試験法がある。この方法では拘束度RF=70t(Kgf/mm・mm)と大きいため、図2のように、本試験で求めた予熱温度は一般の拘束度では安全側の設定にみなされる。多層溶接での予熱パス間温度は、基本的には予熱温度と同等とする。ただし、通常2パスより大きい数のパスの温度は予熱温度を越えるので、溶接を中断しないかぎり予熱は不要である。高すぎる予熱パス間温度で溶接を行なうと、溶着金属と熱影響部の組織が粗大化し、靭性が低下する。一般に高強度の高張力鋼はパス間温度を200℃以下に抑える。後熱は、予熱温度を低減するためにおこなう。硬化しやすい材料ほど予熱温度は高いが、200℃を越えると作業性が悪くなるので、後熱を併用して予熱温度を下げる。例えば、図3に示すように、改良型9Cr-1Mo鋼は、通常250℃の予熱を必要とするが、最低100℃の予熱と150℃×0.5hの後熱の併用で、割れを防止できる。(参考文献:「接合・溶接技術Q&A1000」産業技術サービスセンター、「新版 接合技術総覧」産業技術サービスセンター)


