硬化肉盛法は、主に建設機械や発電機などの各種産業機械部品の耐摩耗性の改善に用いられる。肉盛溶接は、母材を溶かす割合(希釈率という)をできるだけ少なくするため、溶け込みの少ない溶接法が望ましいが、溶着速度とのかねあいで、表1のような、溶接法と材料の組合せが選ばれている。肉盛の対象材質の多くは、炭素鋼のS35C、S45Cや低合金鋼のSCMやSNCM材であるため、熱影響部の硬化、脆化および低温割れの防止、溶接ひずみの緩和の目的で予熱が行なわれる。予熱温度は炭素当量による計算で求めることが多い。
予熱温度(℃)=炭素当量(%)×350℃
炭素当量(%)=C%+Mn%/6+Si%/24+Ni%/40+Cr%/5+Mo%/4+V%/14
ただし、表2のように、経験的に決める場合もある。肉盛後の後熱処理は、溶接部の水素を放出させ、遅れ破壊を防止する目的で行なう。特に、予熱だけで遅れ割れを防止しようとしても、予熱温度が高温になりすぎる場合は、後熱を併用することで予熱温度を下げることができる。なお、要求される性能の溶接材料で母材への直接溶接が不可能な場合には、下盛溶接を行なう。一般に、耐摩耗性合金には軟鋼や低合金鋼系材料、耐食性合金にはオーステナイトステンレス鋼材料が用いられる。(参考文献:「接合・溶接技術Q&A1000」産業サービスセンター、「溶接全書 溶接施工管理」産報出版)


【設計のアドバイス】
肉盛溶接は、通常の溶接に比べ、熱管理・溶接条件の範囲が狭く、その範囲を少しでも逸脱すると、割れや剥離の発生、硬さの異常等が発生するので、注意を要する。