失敗百選
〜豪雨で蓋の外れたマンホールに転落(1985)〜


【事例発生日時】1985年7月14日

【事例発生場所】東京都 杉並区、大田区、板橋区

【事例概要】
   冠水した道路で蓋の開いていたマンホールに 転落、死亡および怪我人がでた。
   激しい雷雨のため各地で浸水し下水道の マンホールの蓋が外れていたためである。

【事象】
   冠水した道路で蓋の開いていたマンホールに 転落、死亡および怪我人がでた。

【経過】
   冠水した道路で蓋の開いていたマンホールに 転落、死亡および怪我人がでた。
   7月14日、 東京を中心に、激しい雷雨のため各地で浸水。 東京都内の20ヵ所以上で下水道のマンホールの蓋が外れた。
   19:07、 東京都杉並区の冠水した道路で男性(63)が、 蓋の開いていたマンホールに片足を突っ込み、 胸を打ち怪我をした。
   19:30頃、 東京都大田区で、冠水した区道を自転車で通っていた男性(41)が、 蓋が開いていたマンホールに転落し胸まで入ってしまった。 男性は助けを求め、付近の人達が引き上げようとしたが、 自転車と共にマンホールに吸い込まれた。
   19:40、 東京都板橋区で走行中の乗用車が蓋の開いていたマンホールに はまり、乗っていた男女2人が怪我をした。
   7月15日7:45頃、 約1.4km離れた大田区の内川で、前日マンホールに吸込まれた男性 の水死体を発見した。
   1986年5月28日、 遺族は、東京都と大田区に対し損害賠償請求を提訴。

【原因】
  1. マンホールの蓋が外れた原因は、 計画を上回る集中豪雨による雨量によって、 下水道施設の流下能力以上の下水流量が生じ、 マンホール内の水圧や空気圧の上昇や、管路施設内に 滞留した被圧空気の急浮上による下方からの圧力が、 マンホール蓋や側塊の耐圧力を上まわったためである。
  2. 出水などで通行が危険になった場合は、 危険個所を表示したり、通行禁止などの処置を取らなかった。 もっとも、どのマンホールの蓋が外れているか見分けるのは 困難かも知れない。
【対処】
   東京都の都下水道局は7月14日の事故をきっかけに、 都内のマンホール(約34万ヵ所)を延べ30の出張所の職員を 動員して総点検した。
   マンホール1個1個について、近くの住民らに聞き込んで、 最近の雨で少しでも浮き上がたような蓋をひろい出した。

【対策】
   東京都は都内のマンホールを総点検した結果、 危険な箇所の蓋を浮上防止型に交換する方針を固めた。
   1985年7月30日(報道)、 東京都下水道局では、傾斜地の下などマンホールの蓋に 水圧のかかりやすい場所を重点に、ボルトで固定する耐圧型蓋や、 格子状になっていて水を通すが簡単に外れない圧力開放型蓋など 浮上防止型蓋を約2000ヵ所に設置した(都区部のマンホールは約34万ヵ所)。
   1985年3月までに、 東京都は大田区の施設改善要望にもとづき、区全域のマンホールを 浮上防止型に交換した。

【背景】
   事故当日の7月14日太陽が照りつけて 天気はすっかり真夏、関東地方は九州北部、中国地方とともに 「梅雨明け」になりそうであった。
   この日は、日中この夏最高の暑さを記録したが、 夕方になって昼間熱せられた地表付近の空気が上昇気流となって 上空の冷たい空気と混ざり合い、大気の状態が不安定となり雷雲が発生、 東京や千葉、神奈川の一部は雷とともに激しい雨に見舞われた。
   1時間雨量は、東京練馬区で50ミリ、大田区40ミリ、 横浜35ミリなどに達し、東京地方には午後6時55分大雨洪水警報が 発令されていた。
【知識化】
  1. 予想を上回る環境変化が安全性を損なう。 企画では予想を上回ったことを想定した予防措置まで 検討する必要がある。
  2. 人身事故が起こらないと、根本的な対策は取られない。
  3. 冠水した道路は危険が一杯である。 蓋なしのマンホール以外にも、漂着物など。
【総括】
   下水道マンホールは、管きょの起点、 会合部および中間部に設置され、人が中に入っての管きょの点検、 清掃および維持管理のために使用されるものである。
   しかし、大雨で水があふれた道路では、 外れたマンホールの位置が判るわけがなく、マンホールの 穴に落ちる事故が発生してしまった。
   予想以上の雨量という自然現象が直接の原因ではあるが、 人身事故になるのを防ぐ手立ては十分存在していた。
   大田区の道は小川にふたをして道路にした所で、 5年前の大雨の際にも今回の現場の下流でマンホールの蓋が 次々と押し上げられる騒ぎがあったという。

以上