サイドローズ   >> 知識データベース   >> 失敗百選

  失敗百選 〜明石の歩道橋上の圧死(2001)〜

【事例発生日付】2001年7月21日

【事例発生場所】兵庫県明石市

【事例概要】
花火打上げ終了後、歩道橋上の南端で花火を見ていた見物客らがJR朝霧駅のある北側に向けて一斉に移動開始。 逆に北側から南側にゆっくり歩いていた見物客の人波にぶつかった。
入場制限や通行制限をしなかったため、歩道橋上に滞留していた約6400人(推定)が押合いとなり、歩道橋の海岸 側南端から5m北側付近で6〜7人が最初に折り重なって転倒し、その空隙に向かって次々と多数の人が倒れこみ、 最終的に300〜400人が巻き込まれた。11人が死亡し222人が怪我をした。

【事象】
花火打上げ終了後、歩道橋上の南端で花火を見ていた見物客らがJR朝霧駅のある北側に向けて一斉に移動開始。逆に北側から 南側にゆっくり歩いていた見物客の人波にぶつかった。歩道橋上に滞留していた約6400人(推定)が押合いとなり、歩道橋の 海岸側南端から5m北側付近で6〜7人が最初に折り重なって転倒し、その空隙に向かって次々と多数の人が倒れこみ、最終的に 300〜400人が巻き込まれた。
【経過】
1999年11月、JR朝霧駅と海岸を結ぶ明石市道「朝霧歩道橋」(全長103m)完成。橋上の 幅員は、車椅子利用や眺望のための滞留を考慮して有効幅員6mとなったが、橋に対してほぼ直角に右折して海岸に降りる階 段は、夏の海水浴時の最大交通量(7200人/時)に従い3mと狭くなっていた。
2000年夏の花火大会は約2km西側の明石市役所周辺で行われたが、道路混雑、住民の苦情、 民家の安全対策などから、2日間の予定が1日のみの打ち上げとなった。
12月31日夜、「ジャパン・カウントダウン2001」 (人出約55,000人)では、花火打ち上げを、市役所周辺から、保安距離の確保できる大蔵海岸に移動。花火約3000発のうち、 朝霧歩道橋の南側約300mの東突堤から約半分、残りは別の突堤や海上の台船など6カ所から打ち上げられた。朝霧歩道橋上 では、花火終了間際に見物のため立ち止まる群集が急増、さらに、海岸へ向かう人出と、花火終了で駅に向かう人出がぶつ かり混雑混乱(推定13〜15人/平方m)が約20分間続いた。
2001年4〜7月、明石市が、明石署、警備会社「ニシカン」との間で、警備計画が検討・作成 されたが最終警備計画書では、警備員3人、歩道橋の滞留人数が1800人(1平方m当たり3人×約600平方m)を超えた段階で 通行を止め、歩道橋から約800m迂回させることとし、歩道橋には駅と海岸の両方向から人が流入することとなった。明石 署の雑踏警備計画では、暴走族対策等の警備要員292人、雑踏対策36人で、歩道橋上の配備はなかった。半年前の、カウン トダウンイベントでの歩道橋上の混雑状況は、ほとんど考慮されなかった(推定)。また、兵庫県下の催し物で暴走族の紛 争が続発していたため、夜店は、警察警備のしやすい場所に出すことになり、歩道橋につながる市道の東西約290mの区間の 両側に約180店が、歩道橋階段の降り口付近まで並んだ。
18:00頃〜、JR朝霧駅からの人出の増加に伴い、歩道橋南端の階段に右折する箇所で幅員が 半減すること、階段下間際まで設営されていた夜店の混雑で通行が阻害されたことなどから、歩道橋上が混み始めた。
18:50〜19:10頃、警備会社が明石署にJR朝霧駅側からの入場制限(人の流れを規制して断続 的に入場させる分断入場規制)を打診したが、明石署は、駅や駅前がかえって混雑するとして入場制限を見送った。
19:25〜35頃、歩道橋上の人数は、入場規制を発動する想定人数の1800人を超えたが、 人が流れていたため、明石署員らはそのままとした。
19:45頃から、「明石市民夏まつり」花火大会(人出約13万人)開始(20:30頃までに約3000発 が打ち上げられた)。花火を見るため、歩道橋南端の階段踊り場付近で立ち止る見物客が多く、混雑に拍車をかけた。
19:45頃、警備員が、再度、現場の警察官に通行制限を要請したが、花火後に行うとして 実施しなかった。
20:21〜、歩道橋上や周辺から、混雑を訴える110番通報が相次いだ (20:40頃まで29本)。
20:31頃、花火打上げ終了。歩道橋上の南端で花火を見ていた見物客らがJR朝霧駅のある 北側に向けて一斉に移動開始。逆に北側から南側にゆっくり歩いていた見物客の人波にぶつかった。警備員が、警察官の 許可を得て、駅側から歩道橋への入場規制を試みたが効果なかった。
20:45〜50頃、歩道橋上に滞留していた約6400人(推定)が押合いとなり、歩道橋の海岸側 南端で20人程度の群集なだれ(注)発生。
20:50〜55頃、歩道橋の海岸側南端から5m北側付近で6〜7人が最初に折り重なって転 倒し、その空隙に向かって次々と多数の人が倒れこみ、最終的に300〜400人が巻き込まれた。このため、11人が死亡し222 人が怪我をした。
(注)群集なだれ
周囲から押される圧力がバランスしているところに、何らかの原因で群衆の中に間隙が発生すると、バランスが崩れて 周囲から人が倒れこみ、連鎖的に転倒が拡大する。一方向に倒れる「将棋倒し」が5人/平方m程度で発生するのに対し、 10人/平方m以上で発生する。
【原因】
@ 限度を超えた群集の歩道橋への殺到
花火大会は短時間集中型のイベントであり、1万人程度しか通行できない歩道橋に3〜4万人もの人が短時間に集中してしまった。しかも、歩道橋の上は格好の花火見学場所であり、集中したことは当然であった。このことを準備段階で検討されていなかった。
A 人の流れを阻害した歩道橋のボトルネック」の存在
歩道橋の幅員が6mであったにもかかわらず、そこから下に下りる階段の幅員が3mであった。当然階段の手前で滞留が発生する。
B 正面衝突する人々の対抗流の形成
花火が終わりかけた頃から、歩道橋で見物していた人は、駅方向に帰ろうとする、花火が終わってもなお会場に向かおうとする流れと衝突してしまった。一方通行や分断通行などの規制をかけなかった警備のありかたに問題があった。

【対処】
当初、明石市消防本部への通報は外傷ではなく子供や大人が気分が悪いといった体調不良による救急要請であり、通信指令室は20:28、第5救急隊に朝霞駅ロータリーへの救急出動を指令したり、携帯119番に通報が入り20:38に第5救急隊に第2救急指令を行なっていた。しかし、要請者が見当たらないなどの状況だった。その後、携帯119番に数件の通報があったが、救助を求めるものの、電波状況が悪く聞き取れない急報等で、負傷者が多数という具体的な内容を示す急報はなかった。
そのうちに、花火警備の消防職員から「負傷者が多数あると思われるので救急車の出動要請、国道28号に部署するよう」携帯無線で連絡があり、明石市消防本部は21:07に「第一次救助救急災害出動指令」を発動した。

【対策】
不明  

【背景】
近年群集を集めるイベントが花盛りである。人気タレントを招いてのライブショー、自治体をあげての博覧会などである。 イベントや施設では、集客が目的であり出来るだけ多くの人を集めるかが、その成功のバロメータになる。しかし、その 集めた人が凶器になってしまうのである。集客優先で安全軽視ではなかったかとの疑問がわく。
【知識化】
@ 群集の超過密状態では「群集なだれ」が起きる。
A 事故の予兆は存在する。「ジャパン・カウントダウン2001」の際に今回の事故が発生する兆候があった。
B イベントには人の流れの解析が不可欠である。
C 事故の正確な情報は意外と伝わらない。発信する側の整理が不可欠である。
【総括】
前年のおおみそかの「ジャパン・カウントダウン2001」 における混雑混乱があったにもかかわらず、何ら対応が取られていなかった、また、歩道橋の設計にも問題があり、まさに「人災」でといえよう。「群集なだれ」は、本事故のように超過密状態で作り出され、その凄まじさは、1mあたり400kgの力に耐えるように設計されたフェンスが壊れていることからも想像以上のものである。超過密状態を作り出す可能性のある集客型イベントへの警鐘としてこの事故をとらえるべきである。

以上