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〜タンカーのナホトカ号の沈没(1997)〜

【事例発生日付】1997年1月2日

【事例発生場所】島根県隠岐島沖

【事例概要】
ロシア船籍タンカー「ナホトカ号」(乗組員32人)が、大しけの日本海を航行中、右舷前方からの高さ15.3mの最大級の波を受け、2つの中央タンクの隔壁が壊れて一瞬のうちに船首から約51mのところで真っ二つに折れた。折損した部分から積んでいたC重油約19,000klの内、約6,240klが流出した。さびや腐食により外板や甲板の厚さが20-35%程度薄くなっていたほか、溶接が外れていた骨組みもあった。このため、船体の強度は建造時の約21万トン・メートルの約半分に低下していた(推定)。

【事象】
ロシア船籍タンカー「ナホトカ号」(乗組員32人)が、大しけの日本海を航行中、右舷前方からの高さ15.3mの最大級の波を受け、2つの中央タンクの隔壁が壊れて一瞬のうちに船首から約51mのところで真っ二つに折れた。折損した部分から積んでいたC重油約19,000klの内、約6,240klが流出した。
【経過】
1970年、ポーランドでナホトカ(NAKHODKA)号建造(総トン数13,157t)。
1997年1月2日、大しけ(風速約20m、波高約6m)の日本海で、上海からペトロパブロフスクへむけ航行中のロシア船籍タンカー「ナホトカ号」(乗組員32人)が、右舷前方からの高さ15.3mの最大級の波を受け、2つの中央タンクの隔壁が壊れて一瞬のうちに船首から約51mのところで真っ二つに折れた。
積載手引きに従わずに両サイドのタンクに重油を満載したため、船体に作用する荷重が一層大きくなった。
2:51頃、ナホトカ号から「浸水し傾いている」との遭難信号を第八管区海上保安本部が受信した。 同号の船体(長さ約180m)は2つに折れ、船尾部は水深約2500mの海底に沈没、船首部(約50m)は浸水して傾き半没状態となった。船首部には約2,800klの重油が残っていた。 折損した部分から積んでいたC重油約19,000klの内、約6,240klが流出した。 延べ約23万人がバケツやひしゃくによって回収作業に当たり、海水や砂などを含め計約31,000klの重油を除去した。
2月25日、座礁した船首部から海水混じりの重油約2,831klの抜き取り作業終了。この間、しけのため作業はたびたび中断した。
3月、運輸省は、船尾部の処理は技術的に困難として、当面放置することを決定した。
4月末〜5月初 兵庫、石川、福井、新潟各県が相次いで重油流出事故の終息宣言を出した。
【原因】
@大しけ(風速約20m、波高約6m)で、右舷前方からの高さ15.3mの最大級の波を受けたことが直接の原因であった。 そのため、船体に約11万トン・メートルの縦曲げ荷重がかかり、2つの中央タンクの隔壁が壊れて一瞬のうちに船首から 約51mのところで真っ二つに折れた。
Aまた、さびや腐食により外板や甲板の厚さが20-35%程度薄くなっていたほか、溶接が外れていた骨組みもあった。このため、 船体の強度は建造時の約21万トン・メートルの約半分に低下していた(推定)。船舶の寿命が過ぎていた。
B積載手引きに従わずに両サイドのタンクに重油を満載したため、船体に作用する荷重が一層大きくなった。
CC重油がエマルジョン化(乳化)し回収油水量は流出油量の約10倍となってしまい、防除作業に要する労力、費用が大幅 に増加した。
【対処】
1月5日、第八管区海上保安本部は、油処理剤を積んだ巡視船10隻やサルベージ船などを出動させたが、強風と高波のため午前中で作業中断。海上災害防止センターはナホトカ号船主代理人から委託を受け、流出油の防除措置(2号業務)を開始した。
1月7日、船首部が福井県三国町安東岬付近の海岸に漂着。 1月9日、国内最大の油回収船「清龍丸」(運輸省所属)が若狭湾沖に到着し回収作業を始めた。
1月14日、漂流した船首が領海内に入ったため、「緊急措置」が適用された。「海洋汚染及び海上災 害の防止に関する法律」(1970年制定)では流出油の処理は船主の責任としているが、沿岸から12カイリ以内の領海内であれ ば「緊急措置」として国が油処理を行うことができる。
1月16日、海上災害防止センターが、福井県三国町沖に座礁している船首部分から重油を抜き取 る作業を始めた。
2月1日、第八管区海上保安本部は海上の重油をほぼ回収。
【対策】
不明。
【背景】
ナホトカ号は、建造から26年経っていた。メンテナンスの状態にもよるが船の寿命は一般に20年と言われている (運輸省船舶技術研究所)、しかし海洋産業研究所によると船齢が25年を超えるタンカーは世界で約280隻あり、 ナホトカ号はその1隻だった。日本のタンカーの平均年齢は8年であるが、ロシアは17年という。ロシアは資本主義 の減価償却という考え方がないから自動車での飛行機でも日本ではつかわないようなポンコツをとことん使い切る (木村汎国際日本文化研究センター教授)との意見もある。
【知識化】
@ 油流出事故の影響は大きく早期の対応が非常に重要である。
A 流出C重油はエマルジョン化で粘度が増大する。
B 海上流出油の回収システムには粘度の高い油やエマルジョン化した油の回収能力が要求される。
C 事故への対応には、十分対応できる装置設備でなければまったく意味がない。(油回収船のレベル)
【総括】
本事故での大規模な油流出では、油回収船「清瀧丸」が到着したのは事故から1週間後で、しかも2mほどの波が起きると ほとんど油の回収はできず、福井県三国町の海岸を始めとして1府5県の海岸を汚染し、油処理はボランティアのひしゃく による人海戦術となり、長期間を要した。今回の油流出事故は海洋環境、生態系に脅威を与えるのみならず、漁業、電力、 観光等国民経済に深刻な影響を与えた。
また、設置が義務付けられている油回収機・油回収船は、湾内・内海などの比較的穏やかな海上での対応できるように整 備されていたが、今回のような外洋での処理には対応できなかった。

以上