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  失敗百選
〜大阪天六地下鉄工事現場でガス爆発(1970)〜


【事例発生日付】1970年4月8日

【事例発生場所】大阪市天六地下鉄工事現場

【事例概要】
   天六地下鉄工事現場で、 継手の抜け止め施工をしなかったガス中圧管から、突然都市ガスが噴出し構内に充満、 大阪ガスパトロール車のエンジンの電気火花が引火して炎上。 多数の見物人が集まったところで、爆発した。 死 者79名、負傷者425名の大事故となった。

【事象】
   天六地下鉄工事現場で、 ガス中圧管から突然都市ガスが噴出し構内に充満、大阪ガスパトロール車の エンジンの 電気火花が引火して炎上。 多数の見物人が集まったところで、爆発した。 死者79名、負傷者425名の大事故とな った。

【経過】
   1969年3月20日、 東京・板橋の地下鉄工事埋戻し跡で ガス中圧鋳鉄管が折損してガス漏れ爆発が発生。 関係機関 がガス関連工事での保安の指導を強化していた。
   1970年4月8日、 工事現場全域約3,000uを覆工板(2m×0.7m×0.2m、380kg)で覆った オープンカット(開削)工 法の大阪・天六地地下鉄工事現場で、 中圧管(口径300o、1.2kg/平方p)の継手からガス漏れが発生してい た。(,br>    ガス漏れと同時に、作業中であった約23名の作業員は地上に脱出したが、 数名は残っていたものと思われる。
   17時20分、 大阪ガス北営業所のサービスパトロールカーからの 「ガス漏れ発生、至急応援頼む」との無線連絡が あり、 大阪ガスからの緊急車、工作車など9台と22名の作業員を出動させた。
   17時25分には、 工事業者の鉄建建設の現場事務所からも大阪ガスへの通報があった。 ガス漏れの通報で駆けつけた大阪ガスの緊急車が鉄建建設ホッパーの 西側5〜6mのところで北向きに停車したが 、ガス漏れが激しいため、 付近住民に広報しなければと判断し、車の方向変換のため後退し、 切り替えて前進に 入ろうとした時に、エンジンが停止した。
   そこで、慌ててセルモーターを始動した時、引火、車両の下部で燃え 出した。 一方、大阪市消防局には、現場近くの住民から17時27分に 「地下鉄工事現場の道路からガスが出ている」との通 報があり、 所轄の北消防署から「救援出場」として無線付きタンク車2台が現場に駆けつけた。
   大阪ガス係員、工事関係者、最先着の浮田出張所の消防隊員が 共に消火器により消火に当たったが、 すでに路面 まで激しく噴き上げているガスに対しては消火不可能だったため、 消防隊は消火栓へ移動して放水態勢を取って いた。
   その間、車両が燃え出したのをきっかけに、 遠巻きしていた見物人や子供達、その上にラッシュ時の通勤者たち が群がり、 消防やガス関係者の「危険だ、近寄るな」の必死の制止に耳を貸すような状況ではなくなっていた。
   燃えている車両は、付近に駐車中の車や民家まで燃え広がる恐れが 大きくなったため、燃えている車両を移動さ せようとした。
   消防のほうでも、第2着の本署分隊も燃焼寸前の付近建物と道路上へ 吹き上げるガスに冷却放水開始をするため 、メイン道路から脇道への移動態勢に入った。
   17:45頃、 大音響とともに爆発。重さ380kgの覆工板約1500枚が木の葉のように空中に舞い上がった。 物見高く 集まっていた群衆は吹き飛ばされ、なぎ倒され、坑内へなだれを打って押しつぶされていった。 10mも吹き上げたガスの火柱は付近の民家に燃え移り、路面両側の街区を延焼2,170uを焼き尽くした。 脳挫傷等による死者39名を含む即死者は64名、病院収容後の死者15名を併せると79名に、 負傷者は425名にのぼ った。

【原因】
  1. ガス漏れの直接原因
       中圧管(口径300o、1.2kg/平方p)の継手が、 工事によって周囲の土を除去され、 宙吊り状態になり、劣化 していた継手が抜け出したためである。
    工事業者の鉄建建設は、大阪ガスからの要請により大阪市交通局が 通知していたにもかかわらず、継手の抜け止 め施工をしなかった。
    また、大阪ガスと大阪市交通局も抜け止め施工の実施を現場で 監督・確認しなかった。( 従来、抜け止め施工は現場の判断にまかせられていた。)
  2. 継手の抜け出した原因
       1962年の敷設工事時の施工不良、導管の埋設が約70cmと浅く 交通荷重による地盤沈下と繰返し荷重により経年劣化、 さらに工事の掘削や埋め戻しによる交通荷重の影響増大などが考えられる。
  3. 惨事が拡大した要因(大阪消防誌による)
    • 事故発生場所が繁華街近くでしかもバス路線上にあった。
    • 発生時刻が夕刻のラッシュアワーであった。
    • 事故初期の車両火災につられてラッシュの見物人が集まった。
    • ガス漏れが密閉された坑内で起こったため状況が把握しにくかった。
    • 覆工板で密閉された状況での爆発のため破壊力が凄まじかった。
【対処】
   ガス漏れ発生と同時に、工事関係者や警察、消防により、事故現場の東西に警戒線を設定、 交通遮断、進入禁止 の措置はとっていたが、制止する側よりも群衆の圧倒的で盲目的な力が勝っていた。 爆発はこのような状況下で 起こった。
   大災害発生後の17時53分、 第3出場指令とともに消防局に局長をトップに消防指揮本部を設け、 事故現場には、 警防部長を長に現場指揮本部を設置した。
  18時13分、第4出場指令と同時に現場出場し、 消防局内は、警備課長指揮の下に指令業務担当体制とした。
  19時00分には、大島助役を本部長とする「大阪市現地災害対策本部」を、 19時20分には、市役所内に、中馬市長 を本部長に「大阪市災害対策本部」を設置し、 消防はその指揮下で災害救助活動に当たった。

【対策】
   1970年に建設省計画局長から「道路掘削工事に起因するガス爆発事故の防止について」と題し、 全国建設協会会 長、土木工業協会会長など関係機関に対し、下記事項などを徹底するように文書が送付された。
  1. 掘削により露出したガス導管の防護方法の明確化 (吊り防護専用梁の使用や屈曲部等にステーを設けて曲 げ応力が働かないように することや白色塗料の塗布など)
  2. ガス導管の監視および通報体制の強化 (工事現場と現場詰所との連絡用の通報設備等の設置、ガス漏れの場合のガス業者、 警察および消防機関に対する通報体制と工事現場付近の住民等に対する警報体制の確立など)
  3. ガス導管の具体的な防護工法、ガス導管の監視および通報体制の強化 (地下鉄企業者等とガス事業者との 間で文書による協定の締結による責任の明確化、 地下鉄企業者等はその協定内容を施工者に文書で通知など)
  4. 準備工事および埋め戻しについては十分な工期をとる。
   その他、1970年「ガス工作物の技術上の基準を定める省令」(ガス遮断機の設置義務・漏洩検査)や 消防庁予防課 長「地下街に対する防災対策の強化について」(地下工作物の給排気設備系統管理の徹底等) などの策が取られた 。

【総括】
   本事故は、ガス導管継手の「抜け止め」に対して、 「抜け止め」防止措置処置を行なわなかったことについて、 この施工法がすでに普及しているとして、 工事を請け負った鉄建建設と発注した大阪市交通局、ガス管所有者の 大阪ガスの3者に対し、 工事責任と発注者としての監督責任およびガス管理者としての安全維持措置遂行に係る 確認責任の共同責任があったと裁判で認定された。
   この判決は共同責任の3者に危険の「予見可能性」があった との判断がベースとなっている。
失敗を未然に防ぐための仮想演習の重要性を物語っている。 それにしても、約 1年前に東京で起きた同様の事故に学べなかったのは、その事故の被害が小さかったためであろうか。

【知識化】
  1. 大きな被害がないと学べない。   
  2. 予見があってもなかなか対策は取られない。(他人が対応してくれるだろうとの思い込みが生まれやすい )   
  3. 「大災害への進展」予測が不足していると強制的な避難や強い規制にはならない。   
  4. 危険な場所からなるべく早く離れる。やじうま根性が生死を分ける。(特にガス事故)
【背景】
   天六ガス爆発事故発生の1970年は我が国にとって、初の「万国博覧会」開催の年であった。 第二次世界大戦から 、復旧、復興期を経て、いわゆる「高度経済成長期」と呼ばれた国あげての好況に 沸き立っていた真っ最中の時 期で、大阪近郊の吹田市の丘陵を中心会場に大開発による会場が開会してから半月後であった。

【引用文献】
[1] 近代消防編集局:ラッシュアワーを襲ったガス爆発事故 近代消防2000年7月臨時増刊号
[2] 近代消防編集局:都市災害の防止対策とは何か

以上