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  失敗百選 〜京都や兵庫で広域停電〜

【事例発生日時】1999年10月27日

【停電地域・戸数】西京都変電所(京都市西京区)と新綾部変電所(京都府綾部市)管内の約42万戸

<京都府> 8市19町,31万戸
京都市:JR東海道線以北の右京,下京各区全域.北,上京,中京,西京,東山,南の各区の一部. 宇治,向日(瞬間的に停電しただけ),福知山,宮津,舞鶴,綾部,亀岡の各市と園部町,峰山町など.舞鶴市内では全戸数の4割にあたる17,000戸停電.福知山,夜久野,大江,三和の4市町では,ほぼ全戸の約34,000戸停電. 京都府南部へは,西京都変電所とは別の送電系統の南京都変電所(宇治田原町禅定寺)など3箇所の変電所から送電されており,宇治など14市町村では停電しなかった.

<兵庫県> 1市15町
北部の氷上郡の5町,但馬地方の豊岡市と10町.

<大阪府> 能勢町
大阪方面は,西京都変電所につながる京北開閉所を通じて大飯原発の送電系統に切り替わったため,停電しなかった.

【停電後の経過】
10月27日11:48: 停電発生.
11:55過ぎ: 関電から京都府に「高浜原発1号機が自動停止した」という原発協定に基づく連絡.
停電後,関電は奥吉野発電所(奈良県十津川村)など計5基の水力揚水発電所の水を急遽落として稼働,遮断装置を解除して京北開閉所から送電.水力揚水発電所の水量が減った後は,大阪府堺市の火力発電所や姫路第二発電所(兵庫県姫路市)など3基の火力発電所を最大出力で運転,原発停止で減少した電力量を補った.
12:12: 京都市東山区方面の9,000戸を除いて復旧.
12:46: 全面復旧.
16:00: 関電京都支店長ら3人が京都府庁を訪れ,荒巻禎一知事に謝罪と事情説明.荒巻知事「府としては大規模停電の被害を想定した通報体制を整えるよう担当者に指示した.電力はライフラインの中心.二度と起きないようにこれを機に万全の態勢を整えて欲しい」.
10月28日15:30: 関電発表「停電は西京都変電所で行っていた変圧器の保護装置を交換する際の人為的ミスが引き金」「今回の事故を踏まえ,送電系設備の工事の工法や点検ルールの見直しをする」「社内の関係部署の責任者約20人からなる対策検討会を設置し,2カ月後をメドに再発防止策をまとめる」.

a.鉄道<約56,500人に影響>

11:51頃〜: 東海道新幹線の京都―新大阪間で電力供給量が低下したため信号系統に異常が生じ,上下各1本が自動停止,10分後運転再開,約1,500人に影響.
東海道本線の京都―梅小路間,京都―山科間で信号機などが作動しなくなり,一時運行見合わせ.送電再開とともに順次復旧したが,ダイヤ混乱.在来線で計153本運休,106本が最長122分遅れ.
JR京都駅(京都市下京区)構内のすべてのエスカレーター停止,電光掲示板,照明,信号機などが消えた.
奈良線は,京都駅の停電の影響で,京都行き普通が桃山駅で約15分間停車した他,東福寺―稲荷間などで信号機停止し,13:17まで快速4本を含む12本運休.駅員が奈良方面に向かう乗客を近鉄京都線に誘導,約1,800人に影響.
山陰線・京都―福知山間,船岡―福知山間,舞鶴線・綾部―東舞鶴間で計22本が停車するなど,約2,200人に影響.舞鶴線で,電車が走行途中停車,安全のため踏切の遮断機をおろしたままにした.福知山駅で,高校生ら約300人が足止め.
京都市営地下鉄は電車の運行に影響はなかったが,丸太町駅から北山駅間で約5分間,構内が真っ暗になり,非常灯で対応,エスカレーターやエレベーター,自動改札機,券売機など停止.
KTR(北近畿タンゴ鉄道)では,信号が自家発電に切り替わり,大きな混乱はなかったが,京都発天橋立行き下り特急が福知山駅で25分間停車,約100人に影響.
京福電鉄は,40分間にわたり全線で16本が運行停止.阪急京都本線でも停電したため,安全確認の徐行運転で5本が最大7分遅れ.

b. デパート,地下街

JR京都駅ビル内の「ジェイアール京都伊勢丹」で,約30分間にわたり真っ暗になり非常灯が点灯,エスカレーターやエレベーターも停止.館内に「ただ今停電しております.しばらくお待ち下さい」との非常放送を流し,買い物客を誘導.2000年問題に向けて準備していた対応マニュアルで買い物客らに放送,店員が階段に避難誘導.同社は,今回の経験を踏まえ,情報伝達を効率化し,スムーズな予備電源の切り替えを可能にするため,マニュアルの見直しに着手.
JR京都駅ビル地下街を中心とした専門店街では蓄電池で非常灯が点灯,管理している「京都駅観光デパート」の職員約15人が69のテナントに直接火気禁止を指示.同社には,自家発電装置や防災マニュアルはなかった.
駅前の地下街「ポルタ」(約130店舗)では,一部の非常灯を除いて店内真っ暗.雨だったため普段より客が多く一時混乱.
北大路駅の地下バスターミナルでは,非常灯の下で職員がバスに乗るための自動ドアの開閉を手動で行った.

c. エレベーター

京都市内ではエレベーターが緊急停止して閉じ込められた人が相次いだ.三菱電機ビルテクノサービス京都支店には,市内でエレベーターが止まっているという問い合わせが昼前から殺到.府警には,同市内のマンションで,突然止まったエレベーター内に人が閉じ込められたなどの通報が相次いだ.
京都市消防局には,135件の119番通報が殺到,そのうち「マンションのエレベーターに人が閉じ込められている」といった通報が3件.商業・文化施設「キタオオジタウン」(北区)で7人,京都全日空ホテル(中京区)で客4人などが閉じ込められ,4件に救急車など計20台出動.いずれも通電とともに動き出したため自力脱出し,救助活動は行わなかった.

d. 交通

京都市上京区の京都府警本部には,停電直後の10分間に「信号が止まった」など379件の110番通報.京都府内の京都,綾部,福知山,舞鶴市などの広い範囲で,約2,600機の信号機が一部を除いて停止.京都市内では東海道線以北を中心に,幹線道路などの953箇所の信号停止.京都府警は発生直後に全署に可能な限りの警察官とパトカーを動員するよう指示,警察官が主要交差点に立ち,手信号で交通整理にあたった.12:05 京都市内の信号機復旧.信号の故障による交通事故はなかった.

e. 病院

武田病院(京都市下京区,300床)で約20分間停電.2件の心臓手術が行われていたが,すぐに自家発電装置が稼働,大きな混乱はなかった. 京都第一赤十字病院(京都市東山区)では,停電と同時に非常用電源作動,医療機器類への影響はなかった.
京都市立病院では停電のため自家発電装置に切り替え,患者らへの影響はなかった.
NTT西日本京都病院(京都市南区)では,停電と同時に非常電源装置(自家発電)に切替え.受付の会計では,コンピューターがダウンしたため手作業で対応.大腸カメラを見ていた最中に停電に遭った院長「画面が消えて真っ暗になって驚いた.スムーズな対応で患者らに影響はなかった」.透析治療では,大事をとって看護婦が手動で装置を動かすなど対応.同病院では阪神大震災をきっかけに,ライフラインが寸断した時の対応を見直していたことが役立ったという.
兵庫県豊岡市の公立豊岡病院では,予定していた手術を中止,CT(コンピューター断層撮影装置)などの検査を復旧後にやり直した.医療費を計算するコンピューターの端末も停止したため一時,患者の列ができた.
兵庫県浜坂町の公立浜坂病院では,自家発電で対応,入院患者らへの影響はなかった.
兵庫県村岡町の公立村岡病院では,自家発電に切替えたが,レントゲンや血液検査の機器が使用出来なくなったほか,会計処理するパソコンが使えなくなった.患者に混乱はなかった.
兵庫県香住町の公立香住総合病院で,会計処理のパソコンが使えなくなった.

f. 携帯電話

11:47頃〜12:50頃: 近畿2府4県で,ツーカーホン関西(本社・大阪市)の携帯電話に発信,着信がしにくくなる障害発生,数百件の苦情.停電から復旧の際,交換機のソフトに不具合が生じたためとみられる.

g. 水道

京都市水道局の山ノ内浄水場(右京区)で,南区,右京区,西京区など約13万戸に供給するポンプ停止.自家発電で4分後に起動したが,はずみで水がパイプを逆流.「濁った水が出る」という苦情約70件,職員が濁水を除去.
マンション屋上などで,貯水タンクのポンプが止まり,断水の苦情約30件.

h. 金融機関,オフィス

京都府内の金融機関では,現金自動受払機(ATM)などが使用不能.本店のシステムを自家発電に切り替えるなどして対応し,営業に大きな影響はなかった.
京都銀行(京都府内に106店)では,約半数の50店舗で一時的にATMが使用不能.
三和銀行(本店・大阪市中央区)では京都府内を中心に,兵庫,大阪を含めた3府県の約70店舗で約10分間にわたりATMが使用不能.
京都中央信用金庫(本店・京都市下京区,京都府内に88店)では,本店を含め京都市内などの40店舗でATM停止.本店では自家発電装置が自動的に作動するなど,大半の店舗で約10分後に回復.三条支店(中京区)だけは13:30頃までATM停止.渉外担当社員が常備しているハンディタイプの電算機端末を窓口に置いて接客.本店と事務センター以外には自家発電装置がない.
JR西舞鶴駅ビルで,金融機関キャッシュコーナーの自動ドアが動かなくなり,利用者1人が閉じ込められた.近くの信用金庫職員が合い鍵を持って駆け付け救出.
京都府庁で,会計課のコンピューター端末がダウンし,バックアップできない事態になった.しかし,内部事務のみに使われていたため,府民への直接の影響はなかった.
兵庫県豊岡市などで,市役所や金融機関などのコンピューター停止,事務処理混乱.
京都全日空ホテルで,チェーンホテルを結ぶ予約システムがダウン.
【関連事例】

関電管内では,今回の停電は,1965年6月22日に岐阜県の御母衣発電所構内の送電鉄塔を,雷雨の影響で発生した地滑りが直撃,基幹送電線が遮断された影響で京阪神一帯が最大約3時間停電したのに次ぐ規模.災害時を除く停電事故としては,これまでで最も広範囲の停電.
1965年当時は全発電所と変電所がループ状の送電線で結ばれていたため,事故で各変電所が連鎖的に相次ぎダウン.この停電後,発電所―変電所間のラインを放射状系統にし,他系統の事故が波及しない方式になった.しかし,この方式では停電地域に他系統の電力を振り向けるのに時間がかかり,復旧まで時間がかかった.
複数の原子炉が同時に自動停止した例としては,1991年6月6日,落雷の影響で,福井県の関電美浜原発1号,日本原電敦賀原発1号,動力炉・核燃料開発事業団(当時)の新型転換炉「ふげん」の3つの原子炉が一斉に停止した例がある. 停電に至った経過(関電発表などによる)

高浜原発からの電力は通常,新綾部変電所(京都府綾部市)を通じて猪名川変電所(兵庫県)に送られていたが,両変電所間の高圧送電線の修繕工事が10月26日から11月2日までの日程で入ったため,10月25日夜から,新綾部変電所を通り西京都変電所(京都市西京区)に送電するよう変更していた.
西京都変電所は,高浜原発からの50万Vの高圧電力を他の送電線網に流すと同時に,計7台の変圧器で27万5,000Vに下げ,大阪府内や京都市内に送電していた.
ところが西京都変電所では,10月12日から28日までの予定で,24年ぶりに,老朽化した三号変圧器のA系統の保護装置(保護装置は,変圧器に故障や過電流などの異常が発生すると,変圧器保護のため周辺の遮断器を働かせ,変圧器を送電系統から切り離す)の交換作業をしていた.このため,高浜原発の電力を他の高圧送電線網に流すルートがその分通常より少なくなっていた.また,旧来の保護装置は単線回路でつながっていたが,新しく交換する保護装置は信頼性を高めるため複線回路でつなげることにしていた.
保護装置の交換作業に先立ち,工事担当者(関電京都支店京都電力所補修課の勤務十数年のベテラン)が,現場で参照するための工事用の配線布設図を基本設計図をもとに書き移す際,A系統を複線回路にしなかった上,1本のケーブルの配線を誤って記入してしまった.配線布設図は作成後に補修課の上司の決裁を経ていたが,ミスに気付かないまま工事開始.誤った配線布設図に基づいてケーブル1本が誤った場所に接続され,複線回路にもならなかった.現場では下請け会社が作業し,補修課や西京都変電所の3人の技術者が立ち会っていたが,ミスに気付かなかった.
10月27日10:00頃から,社員7人が,交換を終えたA系統の保護装置の動作確認試験−変圧器の故障を示す異常な電気信号を模擬的に保護装置に送り,保護装置が遮断器を正常に動かすかどうか−を開始した.しかし,交換した保護装置の1本のケーブルが誤ってつながれていたため遮断器は作動せず,動作確認試験はうまくいかなかった.

一方,保護装置の動作確認試験点検にあたっては,遮断器が作動しなくても支障が起きないよう,保護装置と変電所内全体の異常を監視する「安全装置」をつなぐA,B 2系統の回路をすべて切断しておくことが社内規定で決められていた.しかし,変電所長は「回路遮断は一方だけで大丈夫」と判断してA系統だけを切り,B系統は切断しなかった.「安全装置」は保護装置が機能しなかった場合,より広範囲に遮断器を作動させてトラブルの拡大を防ぐバックアップ機能を持つ.

このため,本来はA系統に流れるはずだった確認試験用の異常信号が,切断していなかったB系統に流れてしまい,その信号を受けた安全装置が作動,A系統の保護装置の遮断器の周辺にある5つの他の遮断器を作動させた.
この結果,京都府南部や大阪方面への送電系統が切り離され,消費電力が130万kWに急減.当時,高浜原発から同変電所に送られていた240万kWの電力が,遮断されていない電線に集中,容量を超えて流れたため電力の需給バランスが崩れ,送電系統の周波数と電圧が低下. 関電・高浜原発(福井県高浜町)では,炉心冷却用の一次冷却水ポンプが送電線から駆動電力を得ているため,モーターの回転数が下がり冷却水供給量が低下(高浜原発では,発電した電気の5%をプラント稼働に使用).「一次冷却材ポンプ周波数低」および「一次冷却材ポンプ電圧低」の警報が発信し,原子炉や発電機に影響が及ばないよう,自動停止システムが作動.定期点検中の2号機を除く,稼働中の1,3,4号機(加圧水型軽水炉,合計出力256万6000kW)の原子炉と発電用タービンが停止.外部への放射能の影響はなかった.

高浜原発からの送電を西京都変電所に中継している新綾部変電所(京都府綾部市)も機能停止し,新綾部変電所から送電している京都府北部と兵庫県北東部に停電拡大.
高浜原発では,自動停止後ファンが止まり,3基すべての発電用主タービンと二次冷却水の給水ポンプの軸受け部分の潤滑油に水蒸気が混入.混入した水は,潤滑油1トン当たり1〜3リットル.潤滑油は劣化の恐れがあるため,約310キロリットルすべてを取り換えることになり,復旧するまでの間,3つの火力発電所と4つの水力発電所の発電量を上げて対応. 28日朝〜 潤滑油の交換作業開始.同日夕方までにトレーラー約30台で,大阪や横浜の業者に発注した潤滑油計約310キロリットルを搬入.水が混入した潤滑油を軸受け部分から抜き取った後,トレーラーからホースをつないで新しい潤滑油を3基に順次注入.29日夜 作業完了,3基の原子炉を順次起動.30日昼頃 発電再開.

各種報道や発表によれば,今回の停電は概ね以上のような経過で発生したものとみられ,いくつもの要因が重なり合って起きたものであることが分かる.これらの要因を下表のように整理してみると,最初のきっかけは転記ミス・回路遮断の誤判断など,非定常作業におけるヒューマンエラーである.しかし,結果的に停電の規模を拡大したのは,非常用システムのオートマティックな作動であった.変電所の安全装置や原発の自動停止システムは,それぞれの施設を守るという目的はきちんと果たしており,それがもたらす停電はシステム設計時から織り込み済みであったともいえる.

(1) 西京都変電所変圧器の老朽化保護装置交換工事(回路複線化を伴う)用の布設図転記ミス
ヒューマンエラー
(2) 誤った布設図に基づく保護装置交換工事
非定常作業
(3) 工事完了後の動作確認試験
非定常作業
(4) 動作確認試験時の回路遮断不充分
ヒューマンエラー
(5) 他系統に試験信号流れ,安全装置・遮断器作動
非常用システム作動(影響が変電所外部に波及)
(6) 他変電所間の送電線工事に伴う送電系統変更
非定常作業
(7) 限られた送電系統に電力集中,電力需給バランス崩れ
異常状態
(8) 高浜原発一次冷却水ポンプへの電力供給不安定
異常状態
(9) 高浜原発自動停止システム作動,稼働中原子炉3基すべて停止
非常用システム作動(影響が広域化)
(10) 広域停電
異常状態

以上