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  失敗百選 〜無人大形・自動ラック倉庫の火災〜

【事例発生日付】1995年11月8日

【事例発生場所】埼玉県比企郡吉見町

【事例概要】
東洋製罐埼玉工場でコンピュータ制御によって缶を管理する無人大型ラック倉庫から 出火し、約3800平方m全焼した。缶を束ねるポリエチレンシートが火災を起こしたが、この消火ミスが原因と推定される。死者3名、重軽傷者6名、被害額は約17億円。

【事象】
東洋製罐埼玉工場でコンピュータ制御によって缶を管理する無人大型ラック倉庫から 出火し、約3800平方m全焼した。死者3名、重軽傷者6名、被害額は約17億円。
【経過】
23:30頃、製品自動倉庫2階に勤務中の従業員が、自動監視モニターの警報ブザー音 および画面により、倉庫のスタッカクレーンの「荷姿異常」を知った。同従業員は、直ちに状況を確認するため現場 に向い、倉庫内8号機クレーンの上部に火災を発見した。
23:32頃、スプリンクラーが作動した。ラックに隙間なく収納されていたプラスチック製 の缶パレットが障害となり効果が薄かった。
23:40頃、別の従業員1人がスタッカクレーンで現場までのぼり、火炎高さ約15pの火災を 消火器で消火を試みたが失敗。プラスチック製缶パレットは激しく燃焼拡大した。
23:52、消防署へ通報。
24:00頃、消防隊到着、火災場所が地上約20mの高所で、幅1.43mの通路両側のラックが 缶パレットで詰まっていたこともあり、8mのはしごを使っても放水の効率が悪かった。 火災は周囲のラック内の製品等に次々に延焼拡大、消火活動中に濃煙、熱気により死傷者が発生すると共に、外からの 消火は屋根、外壁等に阻まれ鎮火までに23時間も要した。消防車34台、消防隊員約170人が出動して消火に当たった。
9日22:45鎮火。
【原因】
 
  1. 消火確認不足(直接原因)・・・・・ヒューマンエラー
    インフラパック機械(パックした缶の荷姿を維持するために覆せられたフィルムを熱収縮させる装置)のリフターが上がりきった状態で停止し、下部に敷かれていた段ボール(注)に、火の付いたポリエチレンシート溶融物が滴下し着火しているのを発見し、消火した。ところが、消火したつもりが、実際には着火のまま無人搬送車でコンピュータ制御で缶を保管しているラック式製品自動倉庫に搬入してしまった。(推定)

    (注)下部に敷かれたダンボールは、リフター作動油圧系統の油漏れがひどいため、油をしみこませるためであり、これも安易なヒューマンエラーであった。
       
  2. スプリンクラーが有効に機能せず・・・・・事前検討不足
    スプリンクラー設置の法規定を鵜呑みにして設置したため、実際に初期消火機能を果さなかった。
       
  3. 消防署への連絡遅れ・・・・・自己保身
    連絡が火災発見から20数分後となっている。なんとか外部に知られまいとする心理的要因があると考えられる。
       
  4. 地上20mのため消火活動がはかどらなかった。・・・・・仮想演習不足
    8mのはしごでは対応できなかった。また、無人倉庫は人間が入ることを前提としていないため、倉庫内での消火活動そのものが制限された。
【対処】
埼玉県警、東松山署、東松山消防署の現場検証と原因調査の実施。
現地の比企広域消防本部は、自らも出火原因調査の体制を取るとともに、自治省消防庁消防研究所に対して調査の指導と 協力を依頼した。消防研究所では、消防研究員のほかに消防大学校および東京消防庁の火災調査の専門家、比企広域消防 本部の火災調査担当者を加えた調査班を結成、現場検証や各種再現実験を含む調査を実施し、その活動成果を1997年10月 「東洋製罐轄驪ハ工場自動倉庫火災の出火原因報告書:比企広域消防本部」としてまとめた。
【対策】
1996年4月26日、自治省消防庁は「ラック式倉庫のスプリンクラー設備のあり方検討委員会を」を設置した。
1998年7月24日「ラック式倉庫の防火安全対策ガイドライン」をとりまとめ、消防庁予防課長名で各都道府県消防主管部長あてに通知した。
この中で、高さ10mを超え、かつ延べ面積が700平方m以上のラック式倉庫については、固定式の自動消火設備であるスプリンクラー設備が義務付けられる従来の規則に加え、その特性に対応したスプリンクラー設備の設置および維持に関する技術上の基準が他の防火対象物とは別に定められた。
また、ラック式倉庫の防火安全対策については、「収納物の種類、使用形態、管理形態等に即してラック式倉庫の関係者の自主的な判断により実施されるべき」とした上で、出火原因を内部からの出火、外部から持ち込まれる火源に分けての出火防止対策、効果的な延焼拡大防止対策について基本的な考え方も示した。
【背景】
自動倉庫は鉄骨一部2階建てで高さ32m床面積3588平方m。生産したスチール缶を約8000個ずつフィルムで梱包し、 プラスチック製パレットにのせ、自動的に倉庫に搬入しラックにおいていく。出荷の際にも自動的にトラックに積み込む。
コンピュータ制御でコントロールした最新鋭設備で、無人化、合理化、省スペースにより大幅なコストダウンを図ったハイテク倉庫であった。競合するアルミ缶の価格低下や果汁系飲料や炭酸系飲料の輸入増加に対応して、コストダウンによるスチール缶の価格競争力強化が求められていた。  
【知識化】
@ 大きな事故には小さな予兆がある。(ハインリッヒの法則) 事故以前に小さなトラブルが発生していたが確実な対応がとられていなかった。 あきらかなヒューマンエラーである。
A 法基準はあくまでも目安にすぎない。 万一の事態を想定し、設備に合ったものにすべきである。
B 万一の場合の対応は、躊躇しないで他人の力を借りる。 火災の場合は、時間の経過とともに加速度的に消火が困難になる。
【総括】
当製缶工場では、事故以前にインフラパック機において、リフターの油漏れによる運動 異常、フードの運動異常(電熱ヒーターとポリエチレンシートの間隔のずれが最大約10cm)、缶の積み上げずれなどによるトラブルが発生していたため、修理改良しながら運転していたという。小さな不具合の放置が大きな事故につながる典型的なケースである。 本倉庫は、コンピュータを駆使したハイテク無人自動倉庫で、地上20mの高さで発生しており、消火活動が十分に行なえず2日間にわたって燃え続けた。
また、本倉庫には法規定通りのスプリンクラーが設置されており、出火時きちんと作動もしているが、消火されていない。その理由の一つとしてパレットの存在が指摘されている。そのパレットをコンピュータ制御で所定の位置に無人搬送するシステムであるが、このパレットがカサとなり、スプリンクラーから出た消火用水が到達しなかったという推定である。また、パレットの材質がプラスチックであり、火勢拡大の一因ともいわれている。
もちろん火種を無人倉庫の中に入れたことが直接の原因であった。 今後、無人化、ロボット化の環境がますます進むことが予測されるが、本事例は、この進歩ゆえに、却って被害が拡大した教訓として捉えるべきである。

以上