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  失敗百選
〜美浜原発2号機の蒸気発生器一次冷却水漏れ〜

【日時】
1991年2月9日

【場所】
福井県美浜関西電力美浜原発2号

【事例概要】
関西電力美浜原発2号機蒸気発生器細管破裂し一次冷却水漏れ、緊急炉心冷却装置作動し、 1次冷却系に自動注水となった。伝熱管の振れ止め金具が、十分挿入されていなかったことが原因であった。

【事象】
関西電力美浜原発で2号機を定格出力(50万kW)で運転中、蒸気発生器の低熱側細管の破裂により、一次冷却水漏れが発生した。緊急用炉心冷却装置が作動し、1次冷却系に自動注水となった。
【経過】
関西電力株浜発電所2号機で、定格出力の50万キロワットで運転していたところ、
13:40、復水器抽出器ガスモニタの警報発信
13:45、蒸気発生器ブローダウン水モニタの警報発信
13:48、原子炉を停止すべく出力降下を開始
13:50、原子炉、タービン、発電機が自動的にトリップ。
原子炉トリップから約7秒後、安全注入信号が発信し、炉心への水の注入等が自動的に作動
14:02頃、損傷側蒸気発生器の主蒸気隔離弁の完全閉止を確認できなかったため、
運転員が現場で同弁の増締めを実施
14:02-14:17、健全側蒸気発生器の主蒸気逃がし弁を開操作し、一次冷却系を冷却
14:10頃-14:25頃、加圧器逃がし弁の手動開操作を試みるも、 2台ある加圧器逃がし弁がいずれも開不能
14:34、加圧器補助スプレによる一次冷却系の減圧操作を開始
14:37、加圧器水位の回復等を確認の上、高圧注入ポンプ2台を停止
(なお冷却水漏洩量は約55トン(推計)であったが、外部環境への放射能影響はなかった。)
1994年2月〜、蒸気発生器交換。
8月16日、2号機再起動。
【原因】
伝熱管損傷の原因・・・・・・組立不良
蒸気発生器伝熱管の振止め金具が大巾に挿入不足であったため、振止め金具による支持がない伝熱管のU字部で流力弾性振動(注)が発生し、振動振幅が制限されなかったことから、伝熱管1本が疲労破断した。

(注)流力弾性振動:細管群に対して、ある限度以上の流速が作用した場合に急激に大きな振動振幅が発生する現象

主蒸気隔離弁不完全閉及び加圧器逃がし弁不動作の原因・・・・・ヒューマンエラー
主蒸気隔離弁については、前回定期点検時に弁棒に鏡面仕上げを実施したことから、弁棒のグランドパッキンに用いられている黒鉛が弁棒摺動部に付着し、弁棒の摺動抵抗が増加したものである。
また加圧器逃がし弁については、運転員が空気配分箱の空気元弁を加圧器逃がし弁作動用空気系統の空気元弁と共有しているものと考えず、予備系統に供給する弁で通常使用しないものと考えて閉止した。この空気弁の閉止がその後の点検記録のチェック過程で見逃されたため、加圧器逃がし弁に作動用空気が供給されず、2台の加圧逃がし弁が作動しなかったものである。

それぞれ不適切な作業管理及び不適切な保守管理によるものであった。

【背景】
日本では、石油依存度を下げるべく石油代替エネルギーの有力な一つとして原子力発電があり、 1961年に東海発電所(出力16.6万kw)の建設に着手し、 1966年7月に日本で初めての商業用原子力発電所として営業運転を開始している。
以来各電力会社によって建設が行われ、2002年8月現在には、53基の原子力発電所が全国に広く分布し運転を行っており、 4基が建設中である。原子力においては、安全確保が第一であり、製作、施工、運転、 保守管理において細心の注意を払い事故・故障・トラブルの発生そのものを防止すなわち予防保全に徹することが重要である。
【対処】
通産省は事故後直ちに調査を開始した。
2月20日、原子力発電技術顧問会に美浜発電所2号機調査特別委員会を設置し、 原因追及および再発防止対策の確立のために調査を進めるとともに、電力各社に対し所要に指示を行なった。
6月6日に調査状況、再発防止対策の方向等についての中間とりまとめを発表し、11月25日に最終報告書を発表した。
原子力安全委員会は、事故後、2月22日に原子炉安全専門審査会発電炉部会に 関西電力株浜発電所2号炉蒸気発生器伝熱管損傷ワーキンググループを設置し、 同種事故の再発防止対策等について調査審議を開始した。10月14日に原子力安全委員会に報告を行なった。
【対策】
再発防止対策につき以下の観点から検討を進められた。

@審査及び検査等のあり方に関する検討
蒸気発生器の振止め金具を工事計画の審査や検査の対象とすることを含め、 審査及び検査等のあり方につき検討を進めていく必要がある。

A自主保安の強化と安全管理の徹底
電力会社においても、品質保証及び保守管理に関する監査機能の独立、強化を図るとともに、 加圧器逃がし弁及び主蒸気隔離弁等主要弁に関する保守管理方法の改善、 異常な事象の発生時に係る運転マニュアルの整備、社内各層の安全意識の一層の向上等を図り、 安全管理の更なる強化と徹底に努める必要がある。

Bモニタリングシステム、計測制御システムの見直し
蒸気発生器伝熱管に係る異常徴候をより迅速かつ正確に感知できるモニタリングシステム、 異常な事象の発生時におけるプラントパラメータの計測システム及びプラント制御システム の改善等これらシステムの信頼性の一層の向上を図る必要がある。

C技術開発の推進とその実用化
蒸気発生器伝熱管に係る異常徴候をより正確かつ早期に検知できる検査技術の開発、 ヒューマンエラーを防止するための関連技術の開発等技術開発を 一層強力に推進しその実用化を図っていくことが重要である。

D異常な事象の発生時における即時対応のあり方の改善
異常な事象の発生時における地元自治体への迅速かつ適切な連絡、 発電所見学者に対する迅速かつ適切な対応等即時対応のあり方を改善していく必要がある。

【知識化】
@ 設計図通りに部品・装置が作られているとは限らない。関連する人への部品の機能を理解させることが必要である。
A 操作員の誤った思い込みを是正するような訓練が必要である。
B 不具合は必ず起こるものと認識し、モニタシステムの充実が大切である。
C パラメータに有意な変化があるときには、装置の運転を直ちに行なうことを予め決めておくことで、 大事故になることを防止できる。
D 点検整備作業のマンネリ化による見落とし防止を図る。
【総括】
原子力の安全確保の基本は、放射性物質の異常な放出による周辺環境への影響を防ぐことである。 本事故は振れ止め金具の挿入不完全という極めて単純な組立ミスに起因して伝熱管の破断に始まり、 原子炉の強制運転停止というレベルに至っている。製作段階での 部品の機能への認識不足も要因として考えられる。 また、加圧器逃がし弁の手動開操作での不作動という不具合も本事例で露見しており、 幸い今回は異常な放射能放出とはならなかったが、潜在的な異常個所の存在は見逃せない。

以上